ヤマイの反省の話題

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ヤマイの反省の話題

エロ漫画家の苦悩と反省のおはなし

エロ漫画を描いてみたいあなたと今後も描き続けたい僕のために

漫画

ロ漫画を読んだことがない、もしくはごくたまにある用途で使用する以外で手に取ることはないといった人はエロ漫画についてどういう印象をお持ちでしょうか。売れない漫画家がとりあえず糊口をしのぐ避難所?確かにかつてはそういう側面も持っていました。それだけに最低限エッチなシーンがメインになっていれば後は何を描いても良いみたいな自由というかいい加減というか、そんな雰囲気も持っていました。

 インターネットの普及とともにより手軽且つ秘密裏にエッチなメディアに触れられるようになった今日、自慰行為のおかずとしてのエロ漫画の地位はかなり低下していると思われますがその結果いよいよ陰にこもってごった煮的避難所の性格を強めていくかと思いきや、逆にジャンルとして純化していって執筆する上でより専門的技能を要するものになっていっているようです。

  元々二人以上の男女が絡み合っているところを色々な角度から描くというのは結構難しいものなんですが近年若い諸先生方のその辺りの能力はインフレ気味に上昇しており、内容もよりストレートにエロを前面に押しだものが主流になってきております。

 僕などはエロ漫画雑誌がなんでもありだった時代の最後の方にデビューした世代なものでかなり取り残されてしまっている感はあるのですが、それでももうしばらくは何とかこの世界の片隅に居場所を確保したいと願っております。そこで今回はひと様の単行本をネタにエロ漫画家としての構えというものを考えてみたいと思います。若さと画力と性衝動が横溢する皆さんにとっては自分のやりたいこと、やっていることをいちいち言葉にするなんて時間の無駄かもしれませんし、そうじゃない僕のような人が今更エロ漫画描きたいなんて思うかというとこれも少々疑問ですからまさしくこれこそオナニーってやつですかね。

        エロ漫画を紹介する 

回教材にするのはこちら、今や一般向け漫画でも活躍する気鋭の作家、岸里さとし先生の『ハメさかり♡』(茜新社)です。なぜこれを選んだかというと岸里先生とは個人的にお友達付き合いをさせて頂いているので万一ご本人の意に沿わないことを書いても謝りやすい、ご本人からサイン本を頂戴していてちょうど手元にある、といったお手軽な事情によるものです。

 このブログは全年齢向けですので修正入れさせて頂きました。これも一応後で謝っておかなければ。

                               f:id:yondokoro:20151105190917j:plain

        岸里さとし『ハメさかり』(茜新社)定価1000円(税抜)

 …アマゾンのリンクを貼ろうとしたら見つかりませんでした。やはり完全な18禁本はここでは駄目なんでしょうかね。この本をお求めになりたい、しかるべきサイトの「あなたは18歳以上ですか?」という問いに後ろめたい気持ちを抱かず「はい」と答えられる方は是非そういうところでお探しになってみて下さい。

        

     エロ漫画を描くことの効能を考える

ずはエロ漫画を描く上で知っておくべきことや身に付けるべき技能などを自分なりに考えて書き出してみようと思います。そしてそれらが自分に備わっているかを検証し、更にはそれらがエロに限らず漫画全般を描くのに役立つものであるという方向にこじつけて何とか全年齢向けの話に仕立てあげたいと考えています。ここから先は皆さんのお手元に『ハメさかり』があるという前提で進めさせて頂く不親切さをどうかお許し頂きたいです。

                エロ漫画と全身像

 趣味で漫画を描かれていたり、漫画家を志望されている方の中で自分の描くものがバストアップでの登場人物の会話ばかりになっているという方は結構多いのではないかと推察します。そのことに悩んでおられる方も別段疑問に感じていない方も一度エロ漫画を描いてみられてはいかがでしょう。

 当然の話ではありますがエロ漫画というやつは人物の全身を描かないことには始まりません。(バストアップだけのエロ漫画というのもそれはそれで一度見てみたいですが)『ハメさかり』収録作品でしたら1本目の『ピーチ、ムチュ、ピチャッ、ジュルルッ』導入部分が分かりやすいでしょうか。人物の全身が丁寧に描き込まれていますね。エロ漫画の場合ヒロインがどんなキャラでどんな年齢層でどんな体型であるかと行った情報がとても重要ですからそれがわかるカットは必須でありまして、バストアップで済ませるわけにはどうにもいかないのであります。無理にでも全身を描かなければいけないエロ漫画を描くという経験は特にエロを描きたいと思っていない人にとっても有益なものとなると信じる次第です。

 僕自身実は作品の冒頭で人物をきっちりと見せるというのがしばしばおろそかになりがちなのでこの辺り自己反省を促したいところです。

               エロ漫画と背景 

 漫画を描くにあたって背景を描くのが得意、または好きと冗談や見栄でなく言える人は余程絵の上手い人か余程の変人でしょう。かくいう僕も下手だし好きであるとはとても言えません。ジャンルによっては背景がそれ程必要ではないこともありますからはじめから描かないという人も一定数おられるでしょう。しかしエロ漫画では背景もまたエロを補完する重要な要素であります。

 何もない、どこなのかよくわからない空間でエッチなことをしているより、校舎やオフィスや壁一枚隔てた向こうに大勢の人がいる場所で行為に及んでいるとはっきり分かった方がよりエロさが増すというのは容易に想像がつくかと思います。これに関しても

岸里先生の漫画は大いに参考になるのではないかと思います。また、背景の描き方そのものも見て頂きたいところです。これも上で挙げた作品の導入部分が分かりやすいでしょう。

 背景のエッセンスだけを巧みに抽出しているのがお分かり頂けるでしょうか。「これだけ描いておけば学校に見える」という肝になる線だけを的確に抜き出して後は思い切って省略しています。これは個人のセンスによる所も大きいので僕や皆さんがおいそれと習得できるものではないかもしれませんがこういう感覚を身につけられれば背景を描くのがより楽しくなるのではないでしょうか。

 こういうストーリーやキャラ付けを表現するアイテムとしての背景、という考え方を持つことは一般向け漫画を描きたい人にとっても役立つものだと思います。

              エロ漫画と描く動機

 漫画を描く人の多くは当然の話ではありますがこういったものを描きたいといった強烈な動機を持っているものですが、時として他の作品の影響や描き方のトレンドなどに幻惑されその動機を見失ってしまったりするものです。ちょっとやそっとのことでぶれたりしない強い動機が求められるのは何もエロ漫画に限った話ではないですが、エロ漫画の世界で確固たる地位を築いている人が非常に強烈な描く動機を感じさせるのも事実であります。

 エロ漫画雑誌を一定期間購読して頂ければお分かり頂けると思いますが、ここで書くのははばかられる年齢層の女の子、熟女、大人の女性と少年の組み合わせ、乱交、主人公の彼女がキモいオタクや汚いおっさんやDQNに寝取られる、眼鏡、メイド、触手など単一のテーマにひたすらこだわり続ける作家さんを多く見つけられると思います。人間の心理が何でもかんでも性欲に由来するという考え方には現代では多くの反論が出ているとはいえ性が人間にとって重大な関心事であるのは間違いないところですし、一度自分の性的嗜好をとっかかりにして自分の描きたいものを見極めるというのも面白いのではないでしょうか。

 ここであらためて岸里さとし先生の『ハメさかり』を見てみますと、この作品集で扱われている題材は実に多様です。つるぺたから熟女のたるんだ肉体、制服、スク水から果てはコスプレ、眼鏡猫耳ともうなんでもありで一見無節操とも思えるでしょう。しかし実際に手にとって読んで頂けたらこれらの作品がひとつの大きなテーマによって通底していることを感じて頂けるかと思います。

 一言でいうなら「変態」です。

 服の縫い目やシワ、行為の段取り、体位やそれに伴う骨や肉の動きなど、どの作品を見ても偏執狂的なディテールへのこだわりが見て取れます。それによって収録作品でいえば『お尻に恋っ』のような、僕なんかが描いたら通り一遍のラブコメ調漫画で終わってしまいかねないような作品にすら変態的な彩りを添えております。もはや正常人の所業ではありません。(褒め言葉です)

 こういう変態チックな細部への興味はエロ漫画のみならず、どんなジャンルの作品を作るにあたっても皆さんの強みになってくれると思います。

 自分の性的嗜好をちゃんと言葉にする、というのは僕の長年のテーマであり、これができていないことが弱みになっているというのはデビューしてからずっと感じていることであります。 

 

     エロ漫画の逃げ道を用意しておく

 ここまで才能ある皆さんにとってエロ漫画を描くという経験が他のジャンルの漫画を描くのにも役に立つかもしれないなんて話を書いてみましたが参考になりましたでしょうか。結果としてエロ漫画を描くことを人々に推奨するかのような内容になってはしまいましたが、かといってみんなエロ漫画家になれと言っているわけもないという辺りご了解頂ければと思います。あくまで便所の日陰の毒草の花ですし、勢力圏を広げたがっているなどと少しでも思われたらたちまち引っこ抜かれてしまう立場でありますからして。

 そんな花でもあなたの立派な花壇に植えてある花の苗の肥やしくらいにはなるんじゃないのって程度のことを言っていると思って頂けたらありがたいです。

 ひとまずこんな所で。