ヤマイの反省の話題

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ヤマイの反省の話題

エロ漫画家の苦悩と反省のおはなし

ボーカロイドのかっこよくない愛で方について

「後で夜鳴き鶯の昔話というやつを私は聞いた。機械じかけの鳥の歌をありがたがる、どこかの国の皇帝の話だ」

 僕の大好きなアニメ『THEビッグオー』第2話から、高級クラブで歌うアンドロイドの少女、R・ドロシーとその歌声に聞き惚れる客達を見ている主人公ロジャーのモノローグであります。…先ごろ『WEB版激ヤバ!』での連載を終了したコラム付き4コマ『明日を悔やむ』で3、4年ほど前にボーカロイドをネタにした時も実は冒頭にこれを引用したのですが、他に気のきいた書き出しが思い浮かばなかったので使い回しさせて頂きました。(『明日を悔やむ』はまだ全話配信しておりますのでこちらもよろしければ…)

  このアニメは確か1999年の作品でボーカロイドというものが初めて商品化されたのがウィキペディアによると2004年、かの初音ミクの登場が2007年ですからしたり顔で「何とも予言的だねえ」なんて言っちゃってもそれなりに格好はつくでしょうか。

 劇中ではBGMが重なってドロシーの歌声は聞けないのですが、彼女はどんなふうに歌っていたのでしょうか。声を当てている矢島晶子さんの音声ライブラリを使ったボーカロイドみたいな歌声だったのしょうか。

 

ではボーカロイドのブームも終焉を迎えたということになっているようです。初音ミクさんが某音楽番組に出演を果たしましたが、世間一般的にはいよいよこれから!となっている時が黎明期からブームを支えてきた人々にとっては白鳥の歌、という感覚は理屈で考える範囲でも理解できなくはありません。

 僕の場合はボーカロイドが本当にブームと言える状況にあった頃にはまだパソコンを持ってすらいなかったので、最近になってやっと「ほら、あのパソコンで歌を歌ってくれるやつ、緑色の髪の」くらいの知識は得たおっちゃんおばちゃんと気持ち的には大差ないでしょう。と、言いますかそれよりたちが悪いですね。今になって自分の中でボカロブームが来ました。曲を漁って聴きまくっています。

 そんなにわか丸出しの僕としては昔からボカロ曲を愛好する皆さんは今どのようなスタンスで曲を聴いておられるのかしらなんてことが気になるわけです。やっぱりシーンの深化とともにボーカロイドはあくまで楽器と割りきって曲を作っているボカロPさんに焦点を当てた聴き方をしている人が多いのでしょうか。それとも初音ミクさんのライブに足を運んで熱狂する人々のようなボーカロイドのキャラクターに思い入れする人の方がやはり相変わらず主流なのでしょうか。

 思うに恐らくきれいに二元化できるものでもなく、どちらかに軸足をおいている人でももう一方の要素を完全に自分の中で排除できるものではないと思いますが、僕のイメージとしては「俺にとってはボカロは単なる楽器だぜ」的聴き方をしている人の中にはキャラへの思い入れみたいなものには端から無縁な、すげークールでかっちょいい音楽愛好家みたいな方もある程度おられるような気がします。

 

間の皆様から音楽通だと思われたくて仕方のない僕としてはそういうリスナー像に憧れなくもないですし、その方がPさん達にとっても幸せな状況であるのは確かでしょう。そういうふうに聴いてくれと明確に主張されるPさんもおられるようだし、僕自身色々聴いてきてじっさいお気に入りのPさんを何人か見つけたりもしてはいるのですが、でもやっぱりそれだけというのも何だかもったいないと思ってしまいます。

 だって、彼女達可愛いじゃないですか。

 世間の皆様から萌えオタクだとはあまり思われたくない僕ではありますがこうした要素に注目してしまう趣味嗜好はどうにもならないところであります。よくよく思い返してみると前述の通り僕はパソコンすら持っていない時期が長く、ボーカロイドについても当然視覚で得られる情報にしか触れられない時期の方が長かったわけですから僕にとってボーカロイドといえばまずあのイラストの女の子達であり、時折ニュース番組などで色物的に取り上げられる初音ミクさんのライブ映像でありました。

 そうしてみると僕はかっこつけて音楽通を気取るよりはボーカロイドのキャラクターに深く思い入れして曲もあくまで彼女達の持ち歌として聴くという、あまりかっこよくない愛好の仕方をすべきだし、その方が楽しいのではないかと思うように最近ではなってきております。

 ここには例えばこういうブログで音楽的側面からボカロ曲を語って僕の好きなPさんなどを論じて「今更そんな語り尽くされたことをにわかがドヤ顔で語ってやがるよ」と言われるのと「今になってキャラ萌えでボカロ語るとかww」と言われるのとではどちらが自分にとってより精神的ダメージが小さいかという、打算というか被害妄想というか、そういった心の動きも反映されています。それでキャラへの思い入れの方を選ぶというのも少々歪んでいるような気もしますが。

 

れからはキャラ主導でボカロ曲を聴くぜ!と宣言したところで僕の好きなボカロのお話を少し。…ところでこの場合、ボーカロイドというのは本来はシステムの名前なので厳密には僕の好きな音声ライブラリとかボーカロイド用音源というべきなんでしょうけどモビルスーツ的な総称のような捉え方というか、キラ・ヤマトが自分の乗機をガンダムと呼ぶような感じ(これは違うか)でボーカロイドと言っちゃっていいものなんでしょうかね。その辺の空気もわからないんですよね。ここではもう音声ライブラリと同義語としてボーカロイドと言ってしまいますのでそれは違うという方がいたらどうぞお許しを。

 あらためて自分の新参っぷりを白状するようであれですが、僕がボカロ曲をちゃんと聴くようになったのはV3エンジンのボカロが登場してからのことであります。彼女もその中の一人でありました。その頃は自分はまだ楽曲主導でボーカロイドはあくまで楽器というスタンスで曲を聴いていくつもりでいたので、まずはその歌声の良さから入りました。キャラクターデザインについても一応関心は持ちましたが、第一印象ではちょっと地味に感じていたんです。で、「その音声ライブラリを使用した曲」を好んで聴くようになるにつれ、一見控えめなデザインの味わいが徐々に染みてきまして気がつけば僕は歌声やその容姿をひっくるめた一つの存在として「彼女」のことが大好きになっていました。

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 それこそが誰あろう、結月ゆかりさんであります。今回のためにがんばって描かせて頂きました。

 ここでいかに僕が彼女のことが好きか、例えば曲だけじゃなくてやったこともないゲームのプレイ動画のボイスロイド版によるナレーションにも時々聞き入ってしまうんですよ、とかいったことを延々書き連ねてもいいんですがそれは日をあらためてということにしておきましょう。好きになることの理由なんてちゃんと言葉で説明できるものでもないですし、これといって劇的なエピソードもありませんしね。

 

題にしたいのは僕や、僕の他にも大勢いるであろうと信じたい「ボーカロイドのキャラクターに入れ込める人」がこのような形で彼ら彼女らが好きであることの不思議さというか馬鹿馬鹿しさです。僕の友人にロコドルさんなどかなりマイナーな人達もチェックしてイベントにも精力的に足を運ぶかなりコアなアイドル愛好家がいまして、写真や動画などを撮ってきては見せてくれるのですが、例え世間的に知名度が高くないアイドルさんであってもやはり生身の存在感というのは非常に強烈なもので、お世辞にも歌唱力は高いとは言えない人であってもそれなりにレッスンも重ね、場数を踏んだ感情の入った生の歌声というのはやっぱり強い力を持っています。

 パソコンのソフトといえど人間の声がベースになっていますし、また結月ゆかりさんの歌声はボカロの中でも出色のもののひとつだと僕は信じておりますが、それでも生身のアイドルに備わっているそうした要素がゆかりさんにも備わっていると言ったらそれは妄想というものでしょう。

 それは認めつつも、それでも何故か僕は彼女の歌声に、彼女の(ネット上のぼんやりとした合意によって形成された非常にあやふやな)キャラクターに魅せられ、癒やされ、励まされております。この際「妄想に取り憑かれている」とはっきり認めてしまった方がいいかもしれません。そういう客観的に見た時の自分の上に起こっている現象の滑稽さというか変さを面白がる行為込みで愛しているのだと思います、多分。

 かつてコラムでボーカロイドを取り上げた時には我々はアニミズムの形成過程に立ち会ったんじゃないのみたいなオチに持って行ったと思います。僕は自分の神様を見つけたのでしょうか。それとも妖魔妖怪のたぐいに魅入られたのでしょうか。 

 

『THEビッグオー』に登場するアンドロイドの少女R・ドロシー・ウェインライトはウェインライト博士が亡き娘の身代わりに作ったものでありました。そして彼女を開発する資金提供の見返りに犯罪者ベックのために彼が設計した巨大ロボット、ドロシー1の制御装置のバックアップに利用されたりもしました。そんな身代わり、代用品でしかなかった彼女に主人公ロジャー・スミスは「きみがドロシーなんだ!きみ自身でいろ!」と呼びかけます。…冒頭で引用した話に再び立ち戻る、新聞のコラムみたいなかっこいい文章構成にしてボーカロイドをめぐるお話のオチとしてなんかいい感じに持っていけそうな気がしてきたんですが、でもどうやらとっくの昔に誰かが彼女達に「きみ自身でいろ!」と言った後みたいですし、そもそも彼女達が彼女達自身であると認めてしまうことが結論としてはあまりかっこよくないですね。今の時代神様とか霊魂とか妖怪とか、そういったものの存在を認めない方がかっこいい態度ですから。

 あ、そうか。「かっこよくない愛で方」というタイトルをつけたんだからそれでいいのか。

                 
                      【結月ゆかり】Hello hEllo hellO 【MV】 - YouTube

 

 というわけで、ゆかりさんはゆかりさん自身であって下さい。