ヤマイの反省の話題

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エロ漫画家の苦悩と反省のおはなし

タチカワ新ペン先スクールGに迷う

いうちに液晶タブレットなど購入し、完全にデジタル環境のみで漫画を描きあげる体制を整えたいと思っておりまして、現在使っている俗に言う板タブ、つまり普通のペンタブレットで絵を描く練習を前々から折りに触れしていたのですがどうも上達せず、自分はデジタルには向かないのだろうかなどと思っておりました。しかしあるアナログ画材を使ってみてその特性を把握していくにつれ、自分がデジタルのペンに馴染めなかった理由をそこに見出した思いがしたのでした。今回は何とかこんな構成でお話を進めていければと思います。

 今回は以前こちらでお目にかけた記事の続きになります。こちらも併せて目を通して頂けるとありがたいところです。

 

yamai-manga.hatenablog.jp

 ン入れに当たって従来使っていたつけペンから万年筆タイプの漫画用ペンへの切り替えを考え、前回は2つの商品を試してその中からタチカワラインマーカーA.T.を選び実際に原稿で使用してみたというのが前回のお話でした。そこでも書きましたように実は万年筆型の漫画用ペンはもう一つあるのですがその時は入手できず試していませんでした。今回はそちらを購入、そして最新の仕事で実際にペン入れの主力にしてみました。そちらが表題にもあるこちらであります。

 

タチカワ 新ペン先 スクールG ブラックF(細字) 0.2〜0.5mm NP-40ABK-F

タチカワ 新ペン先 スクールG ブラックF(細字) 0.2〜0.5mm NP-40ABK-F

 

  ラインマーカーA.T.と同じくタチカワの製品でつけペンもペン先だけでなく軸も同社の製品を好んで使っていましたから、個人的な好みという観点からはとても安心感を持てる物であります。値段もラインマーカーの約半分くらいですから本来なら真っ先に手に入れて試すべきものでありました。実際のところ取り扱っている店舗もラインマーカーよりこちらの方が多いようなので前回足を運んだ店で手に入らなくても諦めず別の店に移動していれば手に入れられた可能性は高かったはずです。

 つまり僕は何となくこの新ペン先を忌避するような気持ちを持っておりました。外見がラインマーカーの方が好みだとか仕事で使うものである以上値段の高い製品の方が安心感があるというか安直なプロ意識を満たせるといった気持ちも働いていましたが、一番大きな理由は恐らく、品名の「G」に引っかかるものがあったというものであったと思います。本品はGペンの描き心地を目指しており、そして僕はどうにもGペンというやつが性に合わなかったのです。

 大抵の漫画教本でいの一番に推奨されることが多いGペンですが僕はあのむやみと柔らかな描き味がどうしても好きになれませんでした。恐ろしく敏感で描き手の未熟さや迷いも拾い上げてしまうGペンはきっと名人の手に握られた時には恐るべき力を発揮するのでしょうがそうではない僕にはぐにゃぐにゃした線を描く道具でしかありませんでした。

 そんなわけで僕はGペンはごく短期間使っただけで丸ペンに移行してしまいました。むろん丸ペンだって決して簡単な道具ではなくそれをずっと使ってきたことについては徒におのれを卑下することもあるまいとは思いますし、Gペンが合わなかったことについても必要以上に自分の実力不足のせいとしてしまうのも事の本質を見誤ることになるのでしょうが、まあともあれGペンと名のつくものに苦手意識を持ってしまったのも事実でありました。デジタルでもClip Studio Paintに装備されているGペンツールには手を出さないようにしておりました。

 そういった心持ちから無意識に新ペン先を避けてしまっていた僕ですが、しかし一旦万年筆タイプの漫画ペンを実際の作業に使っていこうと決めた以上はそうしてもいられないということで早速使ってみることにしました。

 

丸ペンを使ってきた僕はとりあえず細い線を引くことにこだわりを持っていました。ですから新ペン先を使うに当たって実は最初はいくつか種類がある中から極細のスクールを選んでみました。しかしこれはどうも僕的にはしっくりきません。極細といいつつも丸ペンで引ける線の細さには及びませんし―まあそれは予想のつくことではありましたがそれ以外に全般的にどう説明して良いものやら分かりませんがどうも意図したように描けない。これはやっぱりラインマーカーの方がいいかなと思いつつもダメ元で

スクールGを試してみたところ、これが結構僕の手にはぴったりきたのです。

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各漫画ペンの試し書き

 こちらが新ペン先スクールG、同スクール、ラインマーカーA.T.の0.1ミリの線の比較です。筆圧の変化への反応度合いは新ペン先スクールGとスクールではそれ程大きな差はないのですがスクールの方はこちらの手の動きに今ひとつ乗ってきてくれないと言いますか、やや引っかかる感じがします。さっと曲線を引いてみた時のかすれ具合にその辺り感じ取って頂けるでしょうか。スクールGのGペンを模しつつも完全には再現しきれていないところが僕には丁度よい頃合いの書き心地でした。ラインマーカーA.T.もこちらの意図にかなり応えてくれるので好きなのですがいかんせん筆圧はほとんど効きません。

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ちょっと何か描いてみました。

 これだけではなく実際新ペン先スクールGで漫画の原稿を一つ描き上げたのですがそちらはお目にかけられるようになるまでに少し時間がかかるようなのでそちらはまたの機会に。ところでこちらを使っていくに当たって気になるのがペン先の寿命です。新ペン先はインクカートリッジを交換できる作りになっていますがこれをだいたい3,4回交換した辺りで線が太くなってきたなと感じるようになってきます。

 これを書いている時点ではアマゾンでの平均的な価格は1本483円くらいでして、これをそのペースで買い替えていくのはコスト的にどうなのかという向きもあるかと思いますが僕はそれに見合うだけのものは得られていると感じています。

 こうやって色々描いているうちにこうした万年筆タイプの漫画ペンはもちろんそれまで使ってきたつけペンにおいてすら僕は重大な誤解をしていたのではないかと思い至りました。

 僕はこれまで細い線を「初めから細い線が引ける道具」で引いてきたと思い込んでいたんです。

 丸ペンというのは細い線を引くためのペンですが、Gペンほどではないけれどあれはあれで筆圧の変化を結構敏感に拾い上げるものでして、慣れないうちは思ったほど細い線を描けないものであります。かなり軽い力でも線が引けるので思い切り力を抜いて紙の表面を撫でるくらいのつもりで手を動かすのがコツですがその状態を維持し続けるのには若干の練習が必要です。そういう描き方に慣れればびっくりするくらい細い線が引けるようになりますが、そのことを評価するのに己の修練に重きを置くか道具の特質に重きを置くかは人それぞれであります。

 僕の場合は「丸ペンすげー!」となり他の道具を選ぶ際にも細い線を引く道具に目が行くようになり、Gペンやそれの再現を目指した画材を「あれは太い線を引くための道具だ」と忌避するようになりました。

 そんな僕が今新ペン先スクールGを気に入ったということはどういうことなのでしょうか。新ペン先がそれだけ良い画材であるというのはもちろんのことでありますが僕が僕自身にまあそれなりの技量が備わっていると認めたということでもあるしょうか。 

 それはどうも分かりませんが、まあそれはさておきこの手の漫画ペンで丸ペンの再現を目指した商品も是非とも欲しいところですね。

 

定ではこのままデジタル画材の話題まで一気呵成に畳み掛けるつもりでいたのですが長くなりそうなのでここで一旦切ることにしてデジタル画材のお話は次回ということにしたいと思います。

 ところでそういう気付きがあったところで今なら自分はGペンとも仲良くなれるのでは、と思って少し触ってみたのですがこちらの方は相変わらずしっくりこないですね。以前ならこいつは自分には合わないのだと道具のせいにしてしまえたのですが、今回自分の技量にもある程度の価値を認めてしまったのでそうなると自分はまだGペンを使える域に達していないのだという話になってしまいかねませんね。困りました。