ヤマイの反省の話題

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エロ漫画家の苦悩と反省のおはなし

デジタルのお絵描きにおける忘れられつつある技法

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画やイラストなどをパソコン上で仕上げるようになってからは画材店に足を運ぶ頻度もめっきり減りました。以前は漫画を描くことイコールスクリーントーンを買いに行くことでありました。それも末期にはネット通販で済ませていましたから、何と言いますか律儀に一歩ずつデジタル化を進めてきた感じです。

 トーンを貼る作業自体は嫌いでしたが店頭でトーンを選ぶ時間はけっこう楽しかったですね。ああいう実体のあるものに触れてそれを収集するという行為はデジタルネイティブな皆さんには全く無意味なものに思えるのかもしれません。情報の伝達媒介に過ぎないものに何らかの価値を見出してありがたがる人種は絶滅するとは言いませんがそれに近い状態にはなり、野生動物と違ってそのことを危惧もされないでしょう。

ころで僕は現在でも線画まではアナログで作業することが多いでのす。ペンタブレットでソフト上に直描きすることも少しずつ始めていますがお仕事ではまだ怖くてできません。そしてペンやインク、漫画原稿用紙といったアナログ画材への愛着も捨てきれずにいます。このアナログ画材への愛着というやつがまたくせ者で、自分の技術に対する絶対的な自信や、あるいは昔ながらのやり方への理由のない盲信や若い世代への理由なき反発といったものに全面的にすがれるのであれば何の問題もないのですが、実際はデジタル画材をフルに使いこなしている皆さんへの強いあこがれもあったりする中でのこだわりなのでついあれこれと思い煩ってしまいます。

 デジタル世代の人々を見る時に自分達の世代に備わっていて彼らの中では退化してしまっている感覚や機能にばかり目を向けてそれを批判できる人というのはある意味とても幸せだと思います。僕はアナログで絵を描いている時にもしかしたらフルデジタルで描いている人達は脳の今まで使われていなかった領域を開拓してアナログ人間には発想不可能なものをどんどん生み出しているのではないか、そんなことを思って怖くなってしまうのです。

 昔ワープロを初めて使った時に脳の中にある文章が手で書くという行為の中にあるフィルターを介さずに直接ヌルっと出てきたような、そんな不思議な感覚を味わったものです。そうやって出来上がった文章は手書きでは作り出せないものに仕上がったように思えたのですが、絵ではもっとすごいレベルでそういうことが起こるのでないか、ましてや幼少期からそういう機材に取り囲まれてきた世代では…と思うのです。

 あと、よく言われることですがお金も無視できない要素ですね。デジタル画材は初期投資がけっこうかかりますがそれ以降の日々のコストはアナログよりもずっと負担が小さくなります。トーンだけとってみても原稿1本ごとに5,6千円以上使っていましたがそれもほぼなくなりました。すべての作業をデジタルで行っている人がタブレットのペン先をどのくらいの頻度で交換しているのかは知りませんが恐らくアナログのペンほどの速度では消耗しないのでしょう。こういうお金のかかり方は従来だと絵を描こうなんて思わなかったような人々をも絵の世界に引き込んでいる可能性があります。その可能性がまた基本的には古い人間である僕を恐れさせます。

 

んな具合にフルデジタルで絵を描く皆さんへの色々な思いを書き連ねるだけでこの記事を終わりにしてしまって良いかなと思い始めたのですが、タイトルのことを思い出しまして強引に話題を転換することにしましょう。

 すべての作業をコンピュータ上で行う人が多くなり、そういう人々を主なユーザーに想定したようなソフトも増えてきている中、ある作業プロセスは今後急速に忘れ去られていくのではないかと思われます。もうお分かりかと思いますが「アナログで描いた絵をパソコンに取り込み、デジタルでの作業が可能な状態にする」という一連のあれであります。おそらく今後こういう過渡期の技法はむしろアナログ画材以上にすたれていくものなのでしょう。僕はこの一連の作業は割と好きなんですがよく考えたら絵を描く上で本来なら省略できればそれにこしたことはない全く余計なプロセスなんですね。それが好きというのは一種のフェチみたいなものでデジタル世代の人から見ればこれまた年寄りじみた感性なんでしょうな。と、また卑屈になってみたりして。

 今回はフリーソフトGimpでの作業をご紹介します。このブログでは過去Linuxでのフリーソフトを使ったお絵描きを度々取り上げてきましたので今回もその路線でお話しようと思ったのです。有償ソフトではClipStudioPaintについての記事でこの作業についても軽く触れましたので良かったらご参照下さい。

 

yamai-manga.hatenablog.jp

ころでここまで書いておいて僕がうっかり見過ごしていたことは果たしてきょう日スキャナーなんぞを保有する人が一体どのくらいいるのだろうかということです。しまい込んだか捨ててしまったのか、そもそもはじめから持っていないという人も多いのではないでしょうか。こうなるともう技法の紹介というのは名ばかりで実態は単なる思い出話ということになってきますがもうそれでいいということで進めていきます。

 僕がパソコンを購入した頃、ブラザーから5万円台のA3対応複合機MFC-6490CNが発売されました。それ以前はプリンタやスキャナはA4サイズ以上の原稿を扱う機種となると途端に値段が10万円台に跳ね上がるのが普通でしたので各方面に大きな衝撃を与えたようです。僕も迷わず本機を購入しました。今ではエプソンなどからも比較的安価なA3複合機が出ていますし、商業出版向けの漫画原稿用紙を扱うのでなければそういう図体のでかい機械を買う必要もないでしょうからこれから絵を描いてみようとお考えの諸兄はスキャナの購入を検討されてはいかがでしょう。そのお金を液晶タブレットの購入代金の一部に当てた方がいいですかそうでしょうね。

 

速始めてみましょう。まず線画を描きます。僕はペンで描きましたがスキャンしても線が消えないものなら何で描いても良いのです。一昔前の技法書のたぐいだとシャーペンでペン入れ、なんて記述をよく見かけました。

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 結月ゆかりさんです。当初はゆかりさんへの愛を語りつつゆかりさんの絵を描くという趣旨でいこうかと思ったのですがなんか恥ずかしいのでやめました。過去にゆかりさんについて書いた記事もありますので良かったら読んでみて下さいね。

 パソコンに取り込む前に下準備を。XSaneというスキャナを操作するためのソフトをインストールします。このソフトは単独でも使えますが、Gimpプラグインのように連動して使うこともできます。XSaneを入れるとGimpのメニューにこんな項目ができます。ところでカーソルを置いた所に説明が出る機能はオフにしておけば良かったですね。お恥ずかしい。

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 スキャナが接続されていることを確認してから「ファイル」メニューの「画像の生成」→「XSane」→「Device dialog」を選択するとXsaneが起動します。 

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 まずこんな画面が出てきます。「USB scanner」の方を選択します。壁紙をもっとおしゃれなものにしておくべきだった。

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 カラーモードは「True Gray」にしておきます。最初は「プレビューを取得」をした後原稿サイズを調整してから本番のスキャンをするといいでしょう。プレビュー画面の方に点線の四角形が見えますがこれをドラッグで大きさを変えることで原稿サイズを調整します。あとは「スキャン」のボタンをクリックするだけです。

 無事に上のような線画が「Background」という名前の付いたレイヤーとしてGimpに表示されますが、まだ線画と背景下地が一体化した状態でこのままでは彩色の作業ができませんからここから線だけが抽出されたレイヤーを作ります。レイヤーのウインドウの「チャンネル」タブをクリックしてレイヤーチャンネルを表示させます。レイヤーウインドウに3つタブが表示されていますがそのうちの真ん中のタブです。

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 チャンネルを右クリックして「チャンネルを選択範囲に」を選択。このままだと線以外の領域が選択された状態ですので

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 「選択」メニューから「選択範囲の反転」を選択します。フォトショップだとこの後メニューから「選択範囲をコピーしたレイヤー」の生成を選択すればいいのですが今僕が使っているGimp2.8にはそんな機能はないので新しいレイヤーを作り、流しこみツールで任意の色を流しこんで(といってもこの時点ではグレースケール画像なので選択肢はそれほど多くありません)線画レイヤーの出来上がりです。

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 この後「画像」メニューからカラーモードをRGBに変更してやれば色塗りの準備OKとなります。スキャナのガラス面に付いた微細な汚れが黒い点となって画面の各所に散らばっていますからこの時点でそれらを消去していきます。僕は特に目立つものしか消さない派で、こういう絵だと人物以外の箇所にあるものは割と放置してしまいますが本当はもっと神経質になった方がいいのでしょうね。

 このままGimpで作業を続けてもいいですが僕はここから先はKritaで塗っていくことにします。KritaはGimpの標準のファイル形式XCFを開くことができますので普通に保存してGimpを終了、Kritaに引き継ぎます。

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 過程は省略しますがああでもないこうでもないと塗っていって完成です。元サイズの画像をPixivに投稿したのでよかったら見ていって下さい。

       

     【VOCALOID】「夜とゆかりさん」イラスト/山井逆太郎 [pixiv]

 

のようなセミデジタルな人間にはこれらは避けて通れない工程ですし、この一連の儀式じみたプロセスが好きでもあるので特にどうとも思ってはいませんでしたが、こうして文章にしてみるとこれが本来の絵を描くという作業とは全く関係のない、ただ面倒なプロセスであるということが僕自身にも客観的に伝わってきます。いきなりKritaを動かしてこの程度の絵を描くことができるなら全くもってそっちの方がいいに決まっています。

 この記事がこれからパソコンで絵を描こうとしている人々にとって役に立つものになることなど僕自身も期待していません。ここまで書いてきた僕が今感じているバカバカしさとか不安感こそ伝わっていてほしいところですがいかがなものでしょうか。

         

              
                              【結月ゆかり】Day Moon【オリジナル曲】

 

 ひとまずこんなところで。