ヤマイの反省の話題

ヤマイの反省の話題

エロ漫画家の苦悩と反省のおはなし

僕が好きなのは「絵を描くこと」であって「紙に描くこと」ではないはずだが

ずは宣伝など。といいますかこれこそが本題です。10月31日より配信が始まっておりますコアマガジンさまの『WEB版漫画ばんがいち』Vol.14に20ページの作品『おっぱいと理科室』を掲載して頂いております。小学校時代の記憶をたどっていたらいつの間にやらこんなことに…といった感じのお話になっております。

 

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 成人向けの作品ですのでそっち方面のご配慮は最大限にお願いいたしますが雑誌の形式のほかこの作品のみのご購読も可能ですので誌名か作品名、または著者名で検索の上読んで頂ければ幸せであります。

 

回の話題はこの『おっぱいと理科室』の後に描いていた原稿に関することです。何度かこのブログに書いたかと思いますが僕は現在線画までは昔ながらの紙にペンで作業して、その後それをスキャナーに取り込んで漫画制作用のソフトで仕上げの作業を行っています。『おっぱいと〜』まではCOMIC STUDIO(以下コミスタ)というソフトから原稿を取り込み枠線の描き入れや文字の入力をしてから、そのファイルを今度はCLIP STUDIO PAINT(以下クリスタ)というソフトで開いて最終的な仕上げを行うというちょっとややこしい手順を踏んでいます。詳しくはこちらの過去記事に書いております。

 

yamai-manga.hatenablog.jp

 ちなみにこの過去記事でも僕の作品の宣伝をしていますがこちらの作品もまだネットで読んで頂けると思うので併せてよろしくお願いします。

 何でこんな面倒くさいことをするのかということもこちらの記事に書いてありますが改めて大雑把に説明しますと 線画までは手描きという、今や絶滅危惧種のようなやり方へのこの2つのソフトの配慮の差に起因します。コミスタのほうが古いソフトでして線画の取り込みまではこちらを使う方が手軽でかつ手描きの線が綺麗に出るのです。一方のクリスタは後発のソフトだけにより多様な表現ができるようになっておりますがペンタブレットを用いて全ての作業をパソコン上で完結させる人をメインのユーザーに想定しているようで、アナログ人種への配慮はやや後退しているのです。

 

もいずれは全ての作業をパソコン上で行う形に移行しなければいけないだろうとは思っていますが、それまでは上記のような手順で作業していくつもりでした。しかしあるきっかけによりそれが突然難しくなってしまいました。

 僕はMacを使っていますがつい最近までOSは10.7 Lionで使っていたのを思うところあって先日10.11 El Capitanにアップグレードしたのであります。当然スキャナーのドライバーも新しくしたんですが、これがどうもコミスタに適合していないようでコミスタからスキャナーを動かすことができなくなってしまったのです。ここでパソコンに詳しい人ならば新しいドライバーを削除してメーカーのサイトからコミスタに合うドライバーをもらってきて…なんてこともできるのでしょうが残念ながら僕は詳しい人ではありませんし正直めんどくさいし、何だかふとその必要もないのではないかと思ったりもしたわけです。そしてもうひとつ、実はコミスタのファイルをクリスタで開けるといってもそのまま開けるわけではなく一旦クリスタのファイル形式に変換したコピーを作ってそれを開くという形をとっています。つまりコミスタを経由する手順を踏む限り1作ごとに以後使用しない余分なファイルを貯めこむことになるのです。これを省けるのであれば省くことにはそれなりの意味があると言えます。そういったことも鑑みて次の作品ではパソコンでの作業はすべてクリスタで行うことにしたのでした。

 Macの最新のOS、High Sierraではもはやコミスタ自体使えないとのことです。だからこれはコミスタから離れる日が少し早まっただけなんて自分に言い聞かせつつ作業していきました。

 

リスタではスキャンして取り込んだ画像は地の白い部分と線が一体になったレイヤーになってきますのでここから線だけが抽出された地が透明のレイヤーを作らないと以後の作業が全くできません。僕の知る限りでは二通の方法がありまして、ひとつはソフトのメーカーのサイトで紹介されているやり方で前述の過去記事でも紹介した、モノクロモードにしたレイヤーの白色を非表示に設定するやり方です。これをやると最初の段階でどうしても線がかすれる箇所が出てきますので閾値を調整してやります。

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 こちらがそうしてできたものです。まあこれでも問題がないといえばないのですが、僕的には少しばかり線が太くなってしまった気がします。僕は丸ペンを使っているのですが丸ペンを使う人間にありがちなこととして細い線を引くことに命をかけているようなところがあるので線が太くなってしまうのはやはり少し面白くないのです。

 で、今回の原稿ではもうひとつの方法をとりました。取り込んだ画像をラスタライズしてから「編集」メニューから「輝度を透明度に変換」を選択します。すると地の部分が透明になってくれます。

         

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 それがこちらです。線の細さは僕の意図に近いものになってくれました。しかし全体的に線の色がやや薄く頼りない印象になっています。拡大すると線がトーンになってしまっています。つまり線に微細な隙間があるということで、これの何が困るかといいますと自動選択ツールがうまく働いてくれないのです。今回選択範囲の調整で無駄な時間を使ってしまいました。

 このようにどちらのやり方も一長一短ありといったところですが作業の手間やぱっと見の見易さなどを考慮するとどうも一つめのやり方が良さそうです。以後はこちらの方式で行くか、でも元の原稿の細い線も何とか生かしたいなあ、いっそ細く描きたいところはすべてパソコン上で描くことにしたらどうか、いやそれではわざわざ丸ペンで描く意義が…などと読者の皆様には全くもってどうでもいいことでしばし悩んでいましたが、原稿をすっかり完成させた後で第三の方法を思いつきました。コミスタの代わりにPhotoshopを経由するやり方です。

 

Photoshop(以下フォトショ)の標準のファイル形式psdはいうまでもなく画像データを扱う業界のスタンダードであります。Macの画像ビューワー、プレビューからスキャンをして書き出す際にもこの形式を利用できますし、クリスタでもこの形式のファイルを開いて作業が可能です。というわけで早速プレビューから原稿をスキャン、これをフォトショで開いて画像レイヤーを作ります。

 

yamai-manga.hatenablog.jp

  この記事で紹介しているのはGimpを使ったやり方ですがフォトショでも概ねこちらで書いたような手順で線画レイヤーを作ります。これをクリスタで開いて原稿にコピー&ペーストしてやります。psdからクリスタの標準ファイル形式へのコピペも、若干時間がかかるようですが問題なく行えます。そうしてできたのが次の画像です。

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 どんなものでしょう。意味を感じられる程度には違っていると思って頂けるでしょうか。自己満足かもと思いつつ少なくとも僕はそう感じています。顔の紅潮を表す斜線は二つめのやり方でも線が若干かすれてしまっていますがこちらではほぼ問題なく表示されています。

 心配事があるとすれば僕が使っているCS5などのクラウド型ではないバージョンのフォトショがMacの最新のOS、High Sierraでは起動できないという点ですが、こちらもまるっきり方法がないわけでもないので今は考えないことにします。

 何のことはない、あまり効率がよろしくない、余分なファイルが増える、いつまでこのやり方を続けられるか不透明といった前述の問題が何一つ解決していません。でもまあ僕が楽しいのでよしとします。

 

こで本項のタイトルです。ここまで自分がやってきたことを振り返ってみてそういうことを思います。ここまで僕は「絵を描くこと」ではなく「紙に丸ペンで描くこと」にこだわってこんな迷走をしてきました。表現というものが合理性だけでできるものではなく、こうした偏屈さが時としてエネルギーになる場合もあるとは思うものの、手段にとらわれすぎているという感も拭えません。

 僕は人に見せるために絵を描いているのでかろうじて人様にお見せできるレベルの絵を今はこの方法でしか描けないからこうしているのだという言い訳も勿論成り立つわけですが、だからといって完全にデジタル環境下で作業を完結させるための修練や投資を怠っていいというお話にもならないでしょう。

 手段と目的の主従が必ずしも常識の通りにならないのは人の常でありますが、僕がどういう選択をしようとも「良い絵が完成する」という結果につながってほしいと心から願う次第です。